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きりせんしょ

岩手伝統の素朴なお菓子

「きりせんしょ」は、もち米や小麦粉をベースにした生地に、くるみ、黒砂糖、ごまなどを混ぜて蒸し上げた饅頭のことで、素朴な味わいが特徴の岩手の伝統的な和菓子です。臼で挽いたうるち粉やもち粉を使い、モチモチとした食感が特徴です。堅くなっても美味しいため、柔らかさを保つ際には粉に水を混ぜすぎないように注意が必要です。

昔は山椒を刻んで浸した汁で粉を練ったことから「きりさんしょう」と呼ばれ、それが転じて「きりせんしょ」となったと言われていますが、昭和初期にはすでに山椒は使われなくなりました。

この「きりせんしょ」は、家々に伝わる味があり、作り方や味付け、形なども様々です。母や祖母のぬくもりを感じる、昔懐かしい味わいが特徴です。岩手の郷土料理として、地域に愛されている美味しい饅頭です。

主な伝承地域:県央地域(盛岡市、花巻市、紫波町、遠野市など)
主な使用食材:米粉、くるみ、ゴマ、砂糖、醤油

各地の「きりせんしょ」

主に盛岡市、花巻市、紫波町、遠野市などの県央部で食べられています。食材や製法、形態は地域によって様々ですが、お祝い事(特に桃の節句)では、仏壇やひな壇に飾ったり、家族総出で作ったりすることが共通しています。

盛岡市: 小判形や木の葉形など、形も様々。黒砂糖を使ったものが多いです。桃の節句の時期になると、女の子が必ず作る料理として親しまれていました。現在も桃の節句や結婚式で行事食として市販されています。

花巻市: 饅頭系統のものや、砂糖味を抑え素材の風味を重視するゆべし系統のものがあります。

紫波町:黒砂糖と醤油で味をつけたあんを包んだものあります。

遠野市:くるみと黒砂糖を包んで蜜漬けにしたものや、黒砂糖と醤油で味をつけたあんを絡めたものがあります。

行事やおやつに欠かせない存在

きりせんしょは、県央部の水田地帯を中心に昔から食され、行事食として大切にされています。特に桃の節句では、母親と女の子が一緒に作りひな壇に供えることが多かったです。また、この地域では、昼食と夕食の間のおやつを「こびり(小昼)」と言い、農作業の合間に腹持ちの良いおやつとしてよく食べられていました。近年では、その素朴な味わいが人気となり、観光客向けの土産物としても注目されています。

作り方

きりせんしょの作り方は、地域によって多少異なりますが、基本的な手順は以下の通りです。

もち米や小麦粉を水で溶き、生地を作る。
くるみ、黒砂糖、ごまなどを混ぜる。
蒸し器で蒸す。
粗熱が取れたら、食べやすい大きさに切る。

地域や家庭により作り方や味付け、形状に違いがありますが、共通点としては米粉を蒸すこと、くるみとごまを入れること、醤油や砂糖で味をつけることがあります。形状には、小判形や木の葉形、花や舟の形などがあります。

特に遠野市では、生地でくるみと黒砂糖を包んだ蜜入りや、黒砂糖と醤油で味をつけたとろみのあるあんを絡める特徴があります。きりせんしょの型がない時は、俵形を手の平で押しつぶし、スプーンの柄で模様をつけます。

Information

名称
きりせんしょ

盛岡

岩手県